歯列矯正治療のリスクと、対応策について。
現状、歯科医でさえあれば、「矯正歯科」の看板を掲げることができる状況となっていますので、
その歯科医が歯列矯正の治療においてどのくらいの経験を有しているのかが、問題となります。
日本矯正歯科学会が、歯列矯正治療において十分な学識と臨床経験を持つ医師を、一定の審査に
もとづいて認定医・指導医として認定する資格認定制度が、設けられています。
したがって、日本矯正歯科学会のホームページにおいて、お近くの「認定医」などを検索し、治療相談を行うことを、まずはおすすめします。
歯列矯正においては、治療である以上、やはり一定のリスクが存在します。
歯列矯正における主なリスクとして、歯根吸収(しこんきゅうしゅう)や歯根露出(しこんろしゅつ)を
生じるリスクがあるとされます。
歯根吸収は、歯根部分の歯質(セメント質や象牙質)が溶け、抜けやすくなってしまうことで、歯列矯正
治療に伴って歯根吸収が生じるのは、程度の差こそあれ、不可避と言われています。
歯根吸収が生じる原因は現状では十分解明されていませんが、歯に矯正力を加えて動的な治療を
行っていく過程で、歯冠(外から見えている部分)の部分にどうしても力をかけることになります。
その数倍強い力が歯根(歯ぐきの中に植わっている部分)のほうにかかってきて、歯根部分の歯質
(セメント質や象牙質)が溶けて抜けやすくなってしまう点が、歯根吸収の発生に影響を及ぼして
いる面もあるようです。
しかし、この歯根吸収は通常わずかで目立たないものであり、早期発見による適切な対応がなされた
ならば、術後に大きな影響が残ることはないとされています。
歯根露出とは、歯の周囲の歯肉がやせてくさび状になって、歯根が露出した状態を指します。
歯列矯正治療中に歯ぐきが下がってきて、歯根が露出するリスクが存在するといわれています。
治療中に、開口障害、頭痛、筋の緊張などを伴った顎関節症の症状を呈することが、まれにあると
されています。
歯列矯正治療が顎関節症のリスク要因にはならない、という見解が現状では大勢ですが、症例に
よっては、矯正治療による顎関節症の誘発がないとも言い切れない、側面もあるようです。
虫歯や歯周病は、歯列矯正治療に関わり無く起きるものですが、治療のための装置を装着している
場合には、それに起因して口腔の衛生状態が悪くなり、それらが引き起こされるリスクがあります。
また、特に低年齢児においては医師のブラッシング等に関する指導をおろそかにした結果、口腔の
衛生状態が悪くなり、虫歯や歯周病を引き起こす可能性があります。
さらに、各種の金属素材が用いられている矯正装置の使用によって、金属アレルギーが出るリスクが
あります。ニッケルを含む合金を素材とした装置などによるアレルギーが起きるとした報告が、
多数あるそうです。 最近ではアレルギーがでないような材料を使った装置もあるようですので、
担当医に相談するのがよいでしょう。
これらのリスクについては、治療前のカウンセリング段階において、医師より説明があるはずですので、不明点があれば事前に、納得のいくまで確認するようにするべきです。
また、他の医院も訪ね、同じ点に関するセカンドオピニオンとして、別の医師の意見を聞いてみるのも
よいでしょう。
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